マテリアルリサイクルはどんなリサイクル?種類や活用される素材、課題を紹介

「マテリアルリサイクル」という言葉を最近、聞くようになったと感じる方がいるかもしれません。では、その正確な意味は何なのでしょうか。すでに一般的となっているリサイクルという言葉とは、何が違うのでしょうか。
マテリアル、とは英語で材料や素材を意味する言葉です。つまり一度、使われた素材をあらためて使えるようにリサイクルするのがマテリアルリサイクルです。
この点では従来の「リサイクル」という言葉とあまり意味は変わらなく感じますが、素材をリサイクルする方法にはマテリアルリサイクルをはじめとしていくつか存在します。他のリサイクル方法と区別するため、マテリアルリサイクルという言葉があるともいえるでしょう。それらのリサイクル方法やマテリアルリサクルの流れを、本記事で紹介します。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<大阪展>会期:2025年5月14日(水)~16日(金)会場:インテックス大阪

<東京展>会期:2025年11月12日(水)~14日(金)会場:幕張メッセ      


マテリアルリサイクルとともに知っておきたい
3つのリサイクル

マテリアルリサイクルとは、リサイクル方法の一つであり比較対象となるような他のリサイクル方法も存在します。

本記事では代表的な3つのリサイクル方法を紹介し、その中でマテリアルリサイクルがどのような位置付けになるかを一緒に見ていきましょう。

「マテリアルリサイクル」は物理的リサイクル方法

マテリアルリサイクルは、廃棄する製品を破砕、粉砕するなどして、それをまた製品へと再生するリサイクル方法です。他のリサイクル方法と異なり、物理的、機械的なリサイクル方法となります。

また、物理的、機械的リサイクル方法であることから、マテリアルリサイクルは

次に触れるケミカルリサイクルと比べると、大きなコストを必要としません。しかし、マテリアルリサイクルを繰り返していくと製品は劣化していってしまう点がデメリットです。

また、マテリアルリサイクルの中でも、さらに2つの種類が存在します。こちらは、後ほど取り上げます。

マテリアルリサイクルで代表的なリサイクルされる原料に、プラスチックが挙げられます。

「ケミカルリサイクル」は化学的分解を行うリサイクル方法

ケミカルリサイクルとは、廃棄する製品を化学的に原料へとリサイクルする方法です。製品を化学的に分解し、それを再び製品へと再生させます。分解するプロセスは「解重合」、分解したものを再構成して製品にすることを「重合」と呼びます。

ケミカルリサイクルは一度、化学的に原料へと分解してしまうので、初めて原料(バージン材)を製品にするときと同等レベルのきれいな製品をつくることができる点に期待が寄せられます。マテリアルリサイクルと異なり、劣化しにくいということです。

しかし、ケミカルリサイクルは実用化された例が少なく、ほぼ開発途上の技術といってよいでしょう。

「サーマルリサイクル」は製品を燃やすリサイクル方法

サーマルリサイクルは製品から製品へリサイクルする方法ではありません。

マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルで再生できない製品を燃やし、発生する熱を温水プールなどで利用します。再生できない、とは技術的にリサイクルが困難であったり、分別が困難であったりするケースが当てはまります。

つまり、製品や原料としてはリサイクルせず、処分で発生するエネルギーを利用するものです。

製品を燃やす以上、温室効果ガス(GHG)や有害物質の発生は避けられません。よって、サステナブルなリサイクルとは言い難い側面があります。そのため、サーマルリサイクルからマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルへの転換が求められています。


リサイクル後の製品で分けられる2つのマテリアルリサイクル

先ほど、マテリアルリサイクルには「2つの種類」があることに触れました。その2つについて、見ていきましょう。

種類の分け方は、リサイクル後につくられる製品がリサイクル前と同等であるか、レベルダウンした製品がつくられるかによります。

レベルマテリアルリサイクル/水平リサイクル

レベルマテリアルリサイクルとは、リサイクル前の製品とリサイクル後の製品が同等のものであるマテリアルリサイクルのことです。水平リサイクルとも呼ばれます。

例として、ペットボトルをマテリアルリサイクルし、再びペットボトルをつくる場合が当てはまります。

ダウンマテリアルリサイクル/カスケードリサイクル

ダウンマテリアルリサイクルとは、リサイクル後の製品がリサイクル前の製品よりレベルを落として行われるマテリアルリサイクルのことです。カスケードリサイクルとも呼ばれます。カスケードとは階段状の滝のことです。

ペットボトルの事例でいえば、リサイクルで粉砕した原料からポリエステルチップをつくり、最終的には衣服にする場合が該当します。

ここまでも触れてきたように、マテリアルリサイクルを繰り返すと原料やできあがる製品の品質が劣っていくため、ダウンマテリアルリサイクルが行われます。


マテリアルリサイクルが行われる素材の例

マテリアルリサイクルは、さまざまな製品や素材で行われています。

具体例を見てみましょう。

プラスチック

ここまでプラスチックの一種であるPET(ペットボトル)のマテリアルリサイクルの例を取り上げました。ペットボトル以外にも、物流で使われるパレットやスーパーマーケットで見られる食品トレー、卵パックなどでマテリアルリサイクルが行われています。

プロセスとしては、回収したプラスチックを圧縮梱包。そして洗浄、粉砕してフレーク状にするという流れです。その後は、レベルマテリアルリサイクルでリサイクル前と同等の製品をつくるか、レベルマテリアルリサイクルが難しければダウンマテリアルリサイクルで別の製品をつくります。

なお、プラスチックでのマテリアルリサイクルが盛んなPETですが、これはポリエチレンテレフタレートの略です。

ビニール

ビニールハウスやパイプなどの建材で使われるポリ塩化ビニール(PVC)は、異物の混入が少なくリサイクルしやすい特徴があります。一方、燃やすと有害物質のダイオキシンが発生することがあり、積極的にマテリアルリサイクルが行われています。

パイプやタイルといった硬いビニールは、レベルマテリアルリサイクルが行われる傾向にあります。一方、ビニールハウスのビニールのような柔らかいものは、リサイクルで同等の製品をつくるのが難しく、ダウンマテリアルリサイクルで床材になるケースがあります。

金属

鉄やアルミニウムなど多くの金属は、溶かして再利用が可能です。とりわけ鉄の生産者は、高炉メーカーと電炉メーカーという分け方がされますが、高炉メーカーは原料から鉄をつくる、いわゆるバージン材のメーカーです。一方、電炉メーカーは鉄スクラップから新たな鉄に再生させる、つまりマテリアルリサイクルを行うメーカーとなります。

また、付加価値、希少価値の高い「レアメタル」もマテリアルリサイクルが可能で、安定的な素材の確保のためにリサイクルは重要視されています。

木くず・がれき

古い建物を解体すると、木くずやがれきが発生します。これらも、マテリアルリサイクルで新たな製品がつくられています。

木くずは破砕し、成形すると板材などとしてリサイクルが可能です。アスファルトなどのがれきは、再び同等製品にするレベルマテリアルリサイクルができます。

衣類

衣類のマテリアルリサイクルでは、以下の3つの方法が見られます。

1. 裁断

2. 反毛

3. 溶解

1.の裁断は、衣類を適当な大きさに切って、ウエス(雑巾)として再利用する方法です。ご家庭でもこうしたリサイクルをするケースがあるでしょう。

2.の反毛とは、布を無数の針で掻くことにより、綿状にする工程を指します。こうしてできた素材は従来、自動車の防音材にするなどダウンマテリアルリサイクルが行われていました。しかし、近年は再び衣類にするレベルマテリアルリサイクル が行われる例も見られます。

100%合成繊維の衣類は、3.の溶解によってマテリアルリサイクルができます。溶解とは、熱で溶かすことです。プラスチック原料にダウンマテリアルリサイクルする事例が見られます。


国内外におけるマテリアルリサイクルの課題

多くの製品でマテリアルリサイクルができることが、ご理解いただけたかと思います。しかし、技術的にはリサイクル可能でも、制度や環境により困難となってしまう場合があります。マテリアルリサイクルにおける課題は、以下の3つです。

1. 分別の徹底

2. 品質の劣化

3. 統計面での日本の課題

マテリアルリサイクルが行われる製品の割合を高め、さらに品質の高いリサイクルにつなげるためには、分別をする必要があります。この点での課題が、1.の分別の徹底です。もっとも、日本のペットボトルにおいては「PETボトル自主設計ガイドライン」が策定され、原則的にボトルへの着色はしないことになっています。これは、分別時の負担軽減につながるものです。こうした仕組みづくりが、結果的に分別の徹底を実現します。

2.の品質の劣化は、ここまでも述べてきたようにマテリアルリサイクルは回数を重ねていくとどうしても品質面での劣化が避けられません。たとえば、ペットボトルのマテリアルリサイクルを繰り返していくと、ボトルの色がくすんできてしまいます。この点では、マテリアルリサイクル技術でのイノベーションが期待されるほか、ケミカルリサイクルの活用も解決方法に挙がってくるでしょう。

3.は、リサイクルが浸透している欧州と日本とで比べると、日本のマテリアルリサイクルの比率が未だ低い状況にあります。2021年、日本の廃プラスチックにおけるマテリアルリサイクルの比率は21%でした。一方、欧州各国は4〜5割という比率になっている国が少なくありません。算出方法が異なるので単純比較は難しいものの、それにしても数に開きがあります。この課題は、1、2で挙げた解決方法のほか、企業や個人のリサイクル意識向上も求められそうです。


マテリアルリサイクルの製品・ソリューション例

ここでは、企業が実際に上市しているマテリアルリサイクル関連の製品、ソリューションの例を見ていきましょう。ご紹介する3つの製品はリサイクルテックジャパンと同時開催の高機能素材Weekの過去出展製品です。

 炭素繊維強化樹脂ペレット(日本ポリマー産業株式会社)

炭素繊維加工製品を製造、販売する日本ポリマー産業は、「炭素繊維強化樹脂ペレット」を開発。

炭素繊維強化樹脂ペレットはマテリアルリサイクルされた芳香族PAとプレコンシューマ―CFのコンパウンドペレットです。 

炭素繊維(カーボンファイバー)の端材と機能性樹脂を合わせたペレットで、端材とならなかった炭素繊維と同様、機械の部品などに使われます。

 INNOGREEN(オー・ジー株式会社)

「INNOGREEN」は、タイ企業のTeamplas Chemicalによる製品で、日本ではオー・ジーが流通を担うものです。

タイ国内で回収したプラスチックボトルからマテリアルリサイクルした、低臭再生プラスチックペレットです。再び、プラスチック製品に再生されます。

MF式混合溶融機(株式会社放電精密加工研究所)

放電精密加工研究所が販売する「MF式混合溶融機」は、バイオマス廃棄物と樹脂廃棄物を1台の機械で「砕く」「溶かす」「混ぜる」という工程を経ることで、独自の機械的特徴のある融合材をつくれるものです。融点の異なるプラスチック同士でも、混合溶融が可能となっています。


まとめ|マテリアルリサイクルでサステナブル社会の実現へ

地球環境を考える際、二酸化炭素(CO2)を含むGHG排出をいかに削減していくかという課題があります。マテリアルリサイクルはこの課題解決が期待でき、ほかにも資源の消費を抑制することにもつながります。

つまり、マテリアルリサイクルはサステナブルな社会実現のために求められる技術です。

今回、取り上げたように、マテリアルリサイクルの割合を高めていくには、イノベーションや仕組みづくりが求められます。国内外のさまざまな企業が、この問題と向き合い、ソリューションを開発しています。

すでに、こうした取り組みに着手している企業にとっては、アピールする場を設けると効果的です。展示会「リサイクルテック ジャパン」もその有効な手段の一つです。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<大阪展>会期:2025年5月14日(水)~16日(金)会場:インテックス大阪

<東京展>会期:2025年11月12日(水)~14日(金)会場:幕張メッセ      


【来場希望の方】

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※カンファレンスの聴講には別途お申込みが必要です。こちらからお申込みください>
※こちらの来場登録で5/14~16にインテックス大阪内で開催するすべての展示会に入場が可能です。

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