自動車のリサイクルとは?法律によって定められていること、関係者の役割を紹介
資源の有効活用、ひいては持続可能な社会の実現のため、あらゆる製品にリサイクルをはじめとした3R(リデュース=廃棄物を減らす、リユース=繰り返しての利用、リサイクル=資源の再利用)が求められています。自動車もその一つです。
しかし、自動車のリサイクルには高い壁が存在します。フロン類、エアバッグ類、シュレッダーダストと呼ばれる廃棄物の処理が難しいものがあるためです。こうした課題を乗り越えるため、日本では法律によって自動車メーカー、所有者、その他の関係者がそれぞれの役割を担い、必ず自動車のリサイクルを行うよう、定められています。結果、自動車の多くの部分がリサイクルできています。
それでは、どのように自動車のリサイクルが行われているのでしょうか。この記事で見ていきましょう。
自動車リサイクル法と同法で規定される「関係者」
自動車のリサイクルは、2005年に施行した「自動車リサイクル法(正式名称:使用済自動車の再資源化等に関する法律)」という法律で規定されています。前述のシュレッダーダストなどの処理に課題があったことから、つくられた法律です。
自動車リサイクル法は、「関係者」がそれぞれ必要な役割を担う、という建て付けになっています。この関係者それぞれが持つ役割を、詳細に見ていきましょう。
関係者その1「所有者」
自動車リサイクル法において、自動車の所有者はリサイクル料金を支払い、費用負担する役割があります。
では、いつ負担するかというと、原則的には新車購入時です。自動車リサイクルで資金や情報を管理する公益財団法人自動車リサイクル促進センターにお金を預託。つまり、預けます。
新車を購入する際や、中古車購入時も多くの場合、見積書に「自動車リサイクル料」などといった項目があるはずです。もし、新車購入時に預託をしていなかった場合は、廃車にする際の所有者が料金を負担します。
料金は6000円〜1万8000円程度で、車種によって異なります。そして、預託をすると「リサイクル券」が発行されます。廃車時だけでなく、中古車として売る場合も買い手に渡さなければならないので、保管に注意が必要です。もし、なくしてしまった場合は、「自動車リサイクル料金の預託状況」で預託していることを確認できれば、新たに料金を支払う必要はありません。
関係者その2「メーカー」
自動車のメーカー、そしてメーカーに準じる立場の輸入業者(主に海外メーカー系のディーラー)が持つ役割は、リサイクル料金を使って自動車のリサイクルに取り組むことです。
とりわけ重要なのは、メーカーが処理の難しい「シュレッダーダスト」「エアバッグ類」「フロン類」を引き取り、適正にリサイクル・処理を実施することです。これら3つは、自動車リサイクルの阻害要因といわれます。
また、阻害要因を適正に処理する他にも、リサイクルしやすい自動車をつくる取り組み、リサイクル率の向上を図る役割があります。
その他の関係者
所有者、メーカー以外にも重要な役割を持つ関係者が存在します。
・引取業者
・フロン類回収業者
・解体業者
・破砕業者
これらの関係者がどのような役割を果たすのかは、次の自動車リサイクルの流れで紹介します。
車視点で見る自動車リサイクルの流れ
ここまで紹介してきた自動車リサイクル法によって、国内にあるすべての自動車がリサイクルされます。では、どのようにリサイクルは行われるのでしょうか。
先ほど述べたように、自動車リサイクル法はさまざまな関係者を想定しています。よって、リサイクルの流れも複雑です。
そこで、イメージがしやすいよう、廃車にされる自動車からはどのような流れに見えるのか、といった視点で紹介します。
1.自動車の引き渡し
所有者は廃車にする際、自動車を引取業者に引き渡します。
引取業者はリサイクル券を確認し、関係者が利用できる「自動車リサイクルシステム」で廃車にされる自動車のリサイクル料金が支払われていることも確認できれば、「使用済自動車引取証明書」を所有者に発行します。
なお、廃車にせず中古車として売る場合、所有者は次の所有者からリサイクル料金を受け取れます。輸出する場合も、資金管理を行う自動車リサイクル促進センターから返還を受けられます。
この後の廃車にされる自動車の流れは、フロン類がある場合は「2.フロン類の処理(フロン類がある自動車の場合)」、フロン類がない場合は「3.解体(エアバッグ類の回収)」です。
2.フロン類の処理(フロン類がある自動車の場合)
かつてカーエアコンには、熱を移動させるための冷媒としてフロンガスが使われていました。フロンガスは、オゾン層を破壊し地球環境へ悪影響を与えるため、現在は使用が規制されています。
古い自動車にはフロン類が存在するケースがあるため、該当する場合、引取業者はフロン類回収業者に自動車を引き渡します。なお、フロン類回収業者になるには、都道府県知事からの登録を受けることが必要です。
フロン類回収業者は、自動車からフロン類を回収すると指定引取場所に引き渡します。このフロン類は、最終的に自動車メーカーが引き取り、熱処理をすることで環境に悪影響を与えないようにします。
3.解体(エアバッグ類の回収)
フロン類がない自動車、フロン類の回収が終わった自動車は、解体業者が引き取ります。
解体業者は文字通り、自動車の解体をしますが、自動車リサイクルにおける阻害要因の一つである「エアバッグ類の回収」という大切な役割を持ちます。エアバッグ類は適切な処理をしなければ、爆発のおそれがあるためです。よって、解体業者となるには、都道府県知事からの許可が必要です。
解体業者が回収したエアバッグ類は、先ほどのフロン類と同様、指定引取場所に引き渡します。こちらも自動車メーカーが引き取り、安全に解体。解体で出た金属類はリサイクルします。
また、解体によってリサイクル可能な部品が発生しますので、これらはリサイクルに回します。
一方、自動車全体の解体を終えても、フロン類・リサイクル可能な部品以外の残る部分が発生します。これらは、解体業者から破砕業者へと引き渡されます。
4.破砕(シュレッダーダストの回収)
解体で残った部分は、破砕業者がシュレッダーで破砕します。大きさや形状、破砕の流れは違うものの、原理としてはオフィスにあるシュレッダーと同じようなものと考えてよいでしょう。
破砕後に発生するものは、シュレッダーダストと呼ばれます。シュレッダーダストをゴムやプラスチックなどに分別することで、可能な限りリサイクルを行います。
どうしても分別できないものは、指定引取場所に送られ、メーカーが熱として利用します。
破砕業者もシュレッダーダストの処理という役割から、都道府県知事からの許可が必要です。
これからの自動車リサイクル業界におけるニーズとは
自動車リサイクル法の施行や各関係者の努力により、日本における自動車のリサイクル率は99%となっています。ほぼすべての部分がリサイクルできているということです。
さらに、リサイクルでのパフォーマンスを上げていくためのニーズについて取り上げます。
リサイクルできていない資源の再利用
繊維やガラスなどは価値が低いため、シュレッダーダスト後は熱として再利用するか埋め立てられる傾向にありました。こうした材料を、金銭的にも無理がなくリサイクルする方法が求められています。
レアメタルの確実な回収とリサイクル
レアメタルとは、希少価値の高い金属です。自動車で使われるレアメタルには、モーターの磁石として使われるネオジムやジスプロシウムがあります。
これらは特定の国で産出されるため、外交、安全保障上の問題が起こると入手できなくなる可能性が否定できません。そこで、レアメタルを確実に回収しリサイクルにつながるソリューションが求められます。
自動車リサイクル技術・プロセスの輸出
前述のように日本における自動車のリサイクル率は99%と極めて高くなっています。そこで、リサイクルの技術やプロセスを海外に輸出し、ビジネスとすることも考えられます。
まとめ|発展の余地がある自動車リサイクル
日本の自動車リサイクルは、2005年に施行された自動車リサイクル法によって行われており、数値面、技術面において非常に高レベルなものとなっています。
しかし、まだ発展の余地もあります。特に後半で挙げたニーズは、対応しようとする企業も存在するでしょう。
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