自動車リサイクルの事例、取り組み例は?3つの視点から紹介
サステナブルで、なおかつ効率的な自動車づくりのため、自動車メーカーをはじめとした関係組織・関係者が取り組んでいる、自動車リサイクル。実際の自動車リサイクルには、どのような事例があるのでしょうか?
自動車リサイクルは、自動車リサイクル法により所有者が費用を負担しているため、その使い道が事例の一つとなります。さらに、業界団体や各メーカーが新たなリサイクル技術を開発するケースもあります。メーカーなどが積み重ねてきた技術は、リサイクル率やリサイクルの質の向上につながるものです。
この記事では、「自動車リサイクル料金の使い道」「自動車リサイクル高度化財団の事業」「メーカーの取り組み」という3つの視点から自動車リサイクルの事例を紹介します。
自動車リサイクルの事例を知る前に知っておきたい基礎知識
日本の自動車のリサイクルは、自動車リサイクル法に則った形で行われています。
自動車の所有者がリサイクル料金を支払い、その資金を基にメーカーが処理の難しい廃棄物を適切に処分します。フロン類回収業者、解体業者、破砕業者が、廃車にする工程でリサイクルを支える仕組みです。
自動車リサイクル料金の使い方から
リサイクル事例の基本を知る
東京都が自動車リサイクル料金はどのような使い道となっているかを、WEBで公開しています。それを基に自動車リサイクルの基本、事例、かかる費用を見てみましょう。ここでは、前述の処理が難しくメーカーが処分するものを中心に取り上げます。
なお、自動車リサイクル料金は車種によって異なるものの、おおむね6000〜1万8000円程度です。自動車リサイクル料金には、ここで取り上げるものの他、情報管理料金も含まれています。
シュレッダーダスト
自動車リサイクルでは、自動車を解体しリサイクルができるものを取り除いていき、最終的に残るリサイクルができない部分をシュレッダーにかけ破砕します。シュレッダーダストとは、このシュレッダーにかけて破砕されたものの名称です。
シュレッダーダストは、メーカーが引き取り、燃やして熱として利用します。ごく一部を埋め立てることもあります。シュレッダーダストにかかる費用は2000〜4000円です。
エアバッグ類
事故時に膨らみ乗員を保護してくれるエアバッグですが、廃車時は爆発の危険があるため、処理が難しい部分となっています。そこで、エアバッグ類は解体業者が回収したものをメーカーが処分。金属類をリサイクルしています。
エアバッグ類の処分やリサイクルにかかる費用は、2000〜6000円です。
フロン類
フロンガスはオゾン層を破壊する原因となり、地球環境に害を及ぼすため現在は使用が制限されています。しかし、古い自動車ではカーエアコンの冷媒としてフロンガスが使われていたため、廃車にする際は専門の業者が回収し、最終的にメーカーが熱処理をして無害化しています。
フロン類の処理にかかる費用は、2000円です。
自動車リサイクル高度化財団の事業から事例を知る
自動車リサイクルのさらなる推進を図るための研究を行う、公益財団法人自動車リサイクル高度化財団という団体があります。アカデミズムや自動車メーカーによってつくられた組織です。
ここでは、自動車リサイクル高度化財団が委託の形で外部の協力を得ながら研究・調査をした「自主事業」による、自動車リサイクルの事例を見ていきましょう。2023年度の同団体による自主事業を紹介します。
エアバッグ布やシートベルトのリサイクル
エアバッグやシートベルトに使われる布、繊維は高価な素材であり、できるだけリサイクルができたほうが望ましいものとなっています。
そこで、自動車リサイクル高度化財団は、「エアバッグ布およびシートベルトリサイクルのための基盤づくり事業(先行検討フェーズ)」「同(本格実証フェーズ)」を、株式会社矢野経済研究所に委託しました。
事業では、解体で使う工具の共通化による回収品質の向上と安定化、化学物質の量を基準値内に収めるための方法などの調査・研究が行われました。
リサイクルでのCO2排出量可視化
自動車リサイクルは、小規模事業者が少なからずあり、またリサイクルプロセスもさまざまであるため、二酸化炭素(CO2)排出量が明確に把握できていない状態です。
こうした課題をクリアにし、また事業者が自主的にCO2排出の算定、取り組めるよう、自動車リサイクル高度化財団は「自動車リサイクル全般でのCO2排出量可視化業務フェーズ2」を、エム・アール・アイ リサーチアソシエイツ株式会社に委託しました。同社は三菱総研グループの調査会社です。
事業では、複数の解体業者、破砕業者のCO2排出量が試算されました。
AIやIoTの活用
近年、あらゆる業界で生産性向上のため、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進められています。また、AIの活用もその一環となるでしょう。
自動車リサイクル高度化財団の「AI/IoT を用いた自動車リサイクル高度化に係る自主事業」は、まさにこうした取り組みを自動車リサイクル業界でできないかを検証するものです。株式会社NTTデータ経営研究所に委託されました。
廃棄物の画像からAIを使って選別するシステムの開発やデータ連携のあり方の検討など、調査・研究が行われました。
メーカーの取り組みから事例を知る
自動車の設計段階からリサイクルを意識しておけば、廃車時の効率的なリサイクルやリサイクル率の向上が期待できます。そのため自動車メーカーは、「リサイクルしやすい車づくり」という使命を担っています。
国内メーカー3社のリサイクルに関する、改善、研究の事例を見てみましょう。
トヨタ自動車|樹脂のマテリアルリサイクル化
トヨタ自動車株式会社が2017年に発行した『クルリサ クルマとリサイクル』という冊子に、同社のさまざまなリサイクル事例が掲載されています。その中の「樹脂のマテリアルリサイクル化」という事例を見てみましょう。
マテリアルリサイクルとは、プラスチック製品や金属製品などを破砕、溶解し、再び製品にすることです。メカニカルリサイクルとも呼ばれます。しかし、自動車の部品はさまざまな原料が混ざっているケースがあるため分別が困難となり、自動車のマテリアルリサイクルにおける課題となっていました。
この解決のため、トヨタは水を利用した分別装置を導入。シュレッダーダストの樹脂に混ざっている非鉄金属を取り除くことで、マテリアルリサイクルを推進しています。
ダイハツ工業|解体時に燃料を抜き取りやすいタンク
廃車にする際、解体業者などは燃料を抜き取り、無駄を発生させないようにしています。一方、燃料は当然、引火性のものですので、安全面や効率面のさらなる向上が求められます。
ダイハツ工業株式会社は、フューエルタンクの下面にへこみをつくり、ここが燃料抜き取り位置としています。視認性の向上により安全、効率的な燃料抜き取りを目指すものです。
日産自動車|レアアースの回収技術を開発中
カーボンニュートラル実現のための取り組みとしてリサイクルの他、電気自動車(EV)の導入も挙げられるでしょう。EVは、従来の内燃機関車やハイブリッドカーより少ないCO2排出を実現します。
EVには、モーターなどにレアアースやレアメタルが含まれています。希少価値の高い金属類、希土類のことです。高価なものであるため可能な限りリサイクルできたほうが望ましいですし、産出される国も限られているため経済安全保障の面でもリサイクルが求められています。
日産自動車はレアアースに該当するネオジムとジスプロシウムを回収する研究を、早稲田大学と共同で2021年より行っています。レアアースが含まれるモーターを溶融。その後、レアアースを酸化させて鉄と分ける方法です。
まとめ|進化し続ける自動車リサイクル
自動車リサイクルは、自動車リサイクル料金による制度面、業界団体や個々のメーカーの取り組みによって、さまざまな事例が生まれています。
とりわけ業界団体やメーカーは、リサイクル率の向上、リサイクルの質の向上に取り組んでいます。今後も、自動車リサイクルの技術は進化していくことでしょう。
一方、進化のためにはイノベーションも必要です。今は自動車と関係がないリサイクル技術が、近い将来、自動車業界でも役立つかもしれません。リサイクル技術を有する企業の方は、ユースケース拡大のため、「リサイクルテック ジャパン」への出展を検討してはいかがでしょうか。
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