金属リサイクルはどのように行われるのか?
プロセスと企業・製品を紹介
他の材料や製品と同様に、金属製品もリサイクルが行われています。
とりわけ、金属固有の特徴や資源採掘・消費の側面から、金属リサイクルはさまざまなメリットがあり、資源の少ない日本国内ではリサイクルが盛んです。プロセスを見ると、他のリサイクルと同様に金属リサイクルでも回収・分別というプロセスがあり、また物理的な作業によりリサイクルが成立します。
では、デメリットはないのでしょうか? また実際に金属リサイクルを行うのはどのような企業なのでしょうか? この記事で見ていきましょう。
金属リサイクルとは?再生までの大まかな流れなど
金属製品のほとんどは、一度、役目を終えてもリサイクルが可能です。現実に、多くの金属が繰り返し使われています。
金属リサイクルはどのように行われているかなど、概要を見ていきましょう。
そもそも「金属」とは?定義を知る
金属を使った製品は社会のさまざまなところに存在し、多くの人が利用しています。スマートフォンの筐体やスプーン・フォークなどの食器、大きいものでは自動車も重量のほとんどが金属で占められています。
しかし、何をもって「金属」と呼ばれるのか、を考えたことがある人は多くないかもしれません。
まず、国語辞典で「金属」を引いてみると、次のように書かれています。
〈一般に、金属光沢をもち、熱や電気をよく伝え、強度が大きくて折れにくく、展性・延性をもち、常温で固体の物質の総称。重金属と軽金属、貴金属と卑金属、遷移金属と非遷移金属などに分類される〉(『大辞泉』)
このうち、展性とは力が加わることで壊れずに薄い箔に広がる性質のことです。金でいえば、金箔が該当します。また、延性は同じく力が加わっても壊れずに引き伸ばされる性質のことです。同じく金でいえば、延べ棒が該当します。
金属や金属リサイクルを手掛ける会社のウェブサイトを読んでも、辞書の説明とほぼ同じ定義付けがされています。その他、金属元素に該当するものやそれらの合金、という説明もありました。
金属元素には、クロムのCr、鉄のFe、金のAuなどが挙げられます。
また先ほど、辞書の中に「重金属と軽金属、貴金属と卑金属、遷移金属と非遷移金属」と書かれていました。
重金属とは文字通り、重い金属です。正確にいえば、比重が重い金属のこと。比重とは、異なる物質が同じ体積のときに持つ重さの比較のことで、例えば水の比重は1、鉄の比重は7.8です。これは、鉄が水の7.8倍重いことを意味します。重金属に該当する金属には、金や鉄、鉛などです。一方、軽い軽金属は、マグネシウムやアルミニウムなどがあります。
貴金属は、文字通り貴重な金属のことです。産出量が少ないため、貴重な存在となっています。こちらは金や銀などが含まれ、反対に入手しやすい卑金属は鉄やアルミニウムなどがあります。
遷移金属とは、元素記号の周期表を見たとき列にあたる族が3〜11(3〜12とする場合もあります)の範囲にあるもののことです。下に示した周期表でいうと、左右に並ぶ「Group(族)」が3〜11(もしくは12)のものが該当します。具体的には、鉄やニッケル、金などが遷移金属です。非遷移金属はそれ以外の金属であり、アルミニウムや鉛が該当します。
なお、学術的には遷移金属は原子結合で働く電子が比較的自由に動く点が特徴です。材料の性質でいえば、遷移金属の方が展性・延性が高い、鉄など一部の遷移金属には磁性があるが非遷移金属には磁性がない、などの特徴が挙げられます。
さらに、鉄と非鉄金属、という分け方もあります。非鉄金属は、文字通り鉄以外の金属のことです。
金属リサイクルの流れ
前述のように、こうした金属はほとんどがリサイクル可能です。どのようにリサイクルが行われるか、見ていきましょう。
- 回収
- 分別・洗浄
- 溶解・精錬
- 再生
回収は、身近なところでは一般家庭から資源ごみとして出される缶の回収が挙げられます。その他、工場で製品をつくるときに発生する金属の端材、取り壊された建物や廃車になった車からの金属の回収などがあります。
金属は、種類によって性質が異なるため、分別しなければなりません。回収された金属は、磁石を使って鉄とそれ以外に分ける、分析機を使う、などの方法があります。また、機械の状態で金属が存在する場合は、分解が必要です。さらに、付着した油やラベルなどを洗浄します。
分解・洗浄の次のプロセスが、溶解。金属を炉の中に入れ、溶かすことです。溶解を終えたら、不純物を取り除く精錬を行います。
こうして金属は、人が使われる前と同じ状態に戻り、再び製品として利用される流れです。
リサイクルできない金属はある?
ほとんどの金属はリサイクル可能であるものの、ごく一部は困難な場合があります。代表的なケースが合金で、一体に見える金属をさまざまな種類ごとに分けるのが難しい場合があるのです。
また、形状が複雑であったり有害物質が付着していたりする金属もリサイクルは困難となります。
金属をリサイクルするメリット4つとデメリット
どのような材料も、リサイクルを行えば資源の節約や排出する二酸化炭素(CO2)の削減などにつながります。金属をリサイクルする場合も、それは同じです。また、環境面以外のメリットもあります。
ここでは、金属をリサイクルしたときのメリットを4つと、デメリットはあるのかを取り上げます。
資源の消費を減らし有効活用する
リサイクルでつくる再生材とは逆に、天然の資源からつくられる最初の材料のことを「バージン材」と呼びます。金属も、例えば鉄であれば鉄鉱石という天然の資源から鉄の部分だけを還元して。バージン材に当たる鉄鋼製品をつくります。
一方、鉄もそれ以外の金属も、多くがリサイクル可能です。
リサイクルができれば、海外から天然の資源を調達する必要がありません。これは、天然資源が少ない日本という国にとって、特に大きなメリットとなります。地球規模で見ても、資源の消費をできるだけ抑えて持続可能な経済の構築ができるでしょう。
また、バージン材を生産する際と比べて、消費エネルギーの抑制にもなります。
調達・エネルギーなどのコストを下げられる
先に述べた金属リサイクルであれば海外から資源を調達する必要がないという点は、国内にある資源を有効活用できるだけでなく、調達コストをかけずに製品をつくれるということです。調達のコストは、資源そのものの価格だけでなく、運賃などもかかるため、こちらも大きなメリットとなります。
こうして調達コストがかからない、あるいは、低減できる点から、金属はバージン材より再生材の方が低価格になるのが一般的です。
また、天然資源がなくても国内に一定の金属資源が確保され、それが循環を続けるならば価格安定にもつながります。
劣化しにくい
他の材料と比べた場合の金属リサイクルの大きなメリットが、リサイクルによる劣化があまり見られない点です。
例えば、プラスチックの一種であるPETはマテリアルリサイクルを繰り返していくと、どうしても透明感が失われていきくすんだ見た目になってしまいます。そのため、PETボトルとして使われていたものが、いずれボトルにはふさわしくない品質となってしまい、衣類など別の形でリサイクルされる場合があります。
一方、金属リサイクルは不純物を除去する精錬という工程があるため、劣化しにくいメリットがあるのです。
地球にやさしい
ここまで取り上げたように、金属リサイクルには資源消費を抑えられるメリットがあり、地球にやさしいといえるでしょう。
また、前述のようにバージン材より再生材の方が生産時のエネルギー消費が少ないなどの理由から、CO2排出量が少なくなります。経済産業省がまとめた資料によると、金属の再生材はバージン材より6〜9割超、CO2を削減しています。
金属リサイクルにデメリットはある?
このようにたくさんのメリットがある金属のリサイクルですが、デメリットはないのでしょうか。
金属リサイクルの特徴の一つに、使わないものとして廃棄される金属の価格相場が変動する点が挙げられます。ここまで取り上げたように、金属はリサイクルしやすい材料という性質もあるため、スクラップと呼ばれる使用済みの金属は、金銭によって売買されます。
そして、金属のスクラップは生鮮食品や有価証券などのように価格相場があり、日々、変動するものです。よって、景気が良いときや金属の需要が高いときは相場が上がる傾向にあります。反対に、景気が悪いときや金属の需要があまりないときは、相場が下がってしまいます。
一方、金属の再生材はバージン材より低コストだとはいえ、溶解のための電気代や副原料などのコストがかかります。
そうすると、金属スクラップの相場が下がっている場面だと、再生材をつくるコストに割高感が出てしまうケースがあるのです。この場合、金属のリサイクルが滞ってしまうこともある点が、デメリットといえるでしょう。
リサイクルされた金属はどのような製品になるのか?
リサイクルされた金属は、どのような形でユーザーの手元に届くのでしょうか。
前述のように、金属のリサイクルは劣化しにくいことが特徴です。そのため、リサイクル前と同じ製品にも、異なる製品にもできます。
とりわけ、鉄は鋼板や形鋼(H形鋼など)、棒鋼などさまざまな形で使われていますが、リサイクル後もこうしたいずれの形にもできます。また、さらに加工してネジや容器などの形にすることも可能です。
金属リサイクルの市場規模とこれから|市場を見た際の注意点
金属リサイクルは産業として現在、どのような規模なのか、また成長していくのかを見てみましょう。
まず、現在の市場規模についてです。環境省は毎年、「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」をまとめており、その最新版は2024年に発表された2022年のデータとなっています。
こちらのデータで、金属リサイクルに関する業種の市場規模に着目すると、以下のようになります。最も古いデータである2000年と最新の2022年を比べてみましょう。
業種 | 2000年 | 2022年 |
再資源の商品化(鉄スクラップ加工処理業) | 3279億円 | 1兆1302億円 |
再資源の商品化(非鉄金属第二次精錬・精製業) | 5816億円 | 1兆9345億円 |
レアメタルリサイクル | 86億円 | 1063億円 |
いずれのデータも、市場規模が大きくなっていると分かります。
では、この先はどうなっていくと考えられているのでしょうか。
同じく環境省が毎年発行している『環境白書』の令和5(2023)年版には、2030年までの取り組みとして「金属リサイクル原料の処理量を倍増させること」が明記されています。2021年と比較しての数字です。もちろん、未来のことであるので達成できる保証はないものの、政府だけでなく社会全体がリサイクルへの要求をしている点から、金属リサイクルの市場規模は広がっていくと見るのが自然でしょう。
一方で、産業として金属リサイクルを見た場合の注意点もあります。先ほども述べたように、金属リサイクルの資源は相場が変動する点が特徴です。その上でもう一度、「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」の鉄スクラップ加工処理業の項目を見ると、市場規模のピークとなっているのが2008年です。金額は、1兆5675億円で、直近の2022年より高い数字でした。
2008年にリーマンショックが起こり景気後退の局面となりましたが、その直前までは鉄鋼需要が高く、鉄スクラップ加工処理業の市場にも反映されていたことが要因だと考えられます。この翌年である2009年の市場規模は7911億円と前年の半分近くまで縮小しており、相場変動が比較的激しい点には注意が必要です。
金属リサイクルの業界に興味を持つ人は、覚えておいた方が良い点となるでしょう。
金属リサイクルを行う企業や製品の事例
ここまでを読み、金属リサイクルの業界に興味を持った方もいるかもしれません。そこで、実際に金属リサイクルを行う企業、金属リサイクルに関連する製品を見てみましょう。
矢野金属
大阪府堺市に本社のある矢野金属株式会社は、レアメタルを中心に金属のリサイクルを行う会社です。レアメタルとは、産出量が極めて少ない希少な金属のことで、矢野金属ではタングステンやモリブデンなどさまざまなレアメタルを、回収、選別、加工、出荷まで行います。
東京や福岡にも拠点を有する他、中国やタイに関連会社があり、グローバルな対応も可能な会社です。
金属切屑のリサイクル装置(SUN METALON)
次に、製品、ソリューションを見てみましょう。
日米で事業展開する株式会社SUN METALONは、「VENUS-S」という金属リサイクルのための装置を開発しました。加工などで生じる金属の切りくずや切り粉を特殊な電磁波で加熱。装置を通すことで不純物の除去も行えます。電源を再生可能エネルギーをとすることで、CO2排出量を半分に減らせるソリューションです。
従来、こうした切りくずや切り粉はスクラップ業者に引き取ってもらい、リサイクルがされていました。しかし、この装置を導入することで金属のリサイクルが一つの工場内で完結できます。
固相リサイクル法(マクルウ)
株式会社マクルウは、最軽量金属であるマグネシウムの加工技術を持つ、日本のスタートアップです。リサイクル分野では、産業技術総合研究所との共同研究によりマグネシウム合金スクラップを直接押し出し加工する、「固相リサイクル法」という技術を有しています。
従来よりもエネルギー消費の少ないリサイクルの技術です。
まとめ|金属リサイクルがもたらす大きな利益
金属リサイクルが地球にやさしいのはもちろんですが、経済的なメリットも大きい手段となります。すでに存在している金属製品を国や地域の中で循環させていくことで価格が安定し、企業にとってだけでなくエンドユーザーとなる個人消費者にも利益をもたらすからです。
こうした金属リサイクルのメリットは、他の材料と比べてリサイクルによる劣化が少なく、リサイクル後の製品化でさまざまな形にできることも大きく影響しています。今後も、金属リサイクルはますます進化し、地球と社会にとってのソリューションとしてあり続けるでしょう。
リサイクルテック ジャパンでも、こうした最新のリサイクル技術、製品を紹介します。ぜひ、お越しください。
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