鉄のリサイクルはどう行われるのか?何度も再利用可能な理由とともに紹介

カーボンニュートラル、そして持続可能な社会を実現するため、政府、研究機関、そして企業がさまざまな施策、取り組みを進めています。代表的な方法となるのが製品や材料のリサイクルではないでしょうか。こうした中で、鉄もリサイクルが盛んな材料です。

鉄というと大規模な製鉄所がイメージされ、利用する先もビルや橋梁などが思い浮かびます。一方で、繰り返しリサイクルが可能なことから、非常にエコロジーな材料でもあることを、ご存じでしょうか。また、日本にはリサイクル可能な鉄が豊富に存在しており、海外からのニーズがあります。

この記事で、鉄のリサイクルにおけるプロセスや長所を見ていきましょう。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<大阪展>会期:2025年5月14日(水)~16日(金)会場:インテックス大阪

<東京展>会期:2025年11月12日(水)~14日(金)会場:幕張メッセ      


鉄が「リサイクル素材」として重宝される理由とは?

冒頭で述べた通り、鉄は繰り返しリサイクルが可能であり、言い換えればリサイクルしやすい材料、となります。そのため、ごく一部の合金などを除き、ほとんどの鉄鋼製品がリサイクルされています。

ここでは、鉄が主要なリサイクル素材として見られる理由を見ていきましょう。

不純物を容易に除去できる

鉄のリサイクルには、溶解、精錬という工程があります。この際、スラグという副産物が発生し、シリコンやアルミ、チタンといった不純物を取り込みます。

工程で鉄から不純物をスラグという形で分離させやすいことから、鉄はリサイクルがしやすい材料であるのです。

また、スラグも土木工事やセメントの材料として利用されるので、資源を有効活用できます。

品質を落とさず何度でもリサイクル可能

不純物を除去しやすいということは、品質の向上につながります。また、鉄はリサイクルを繰り返しても、ほとんど品質が落ちません。よって、何度も繰り返しリサイクルが可能です。

何度もリサイクルできる特徴は、数ある材料の中でも特筆すべき点といえるでしょう。例えば、プラスチックの一種であるPETも数を重ねたリサイクルが可能であるものの徐々に品質が劣化してしまい、PETボトルとして利用できない品質まで落ちると衣料など別の形でリサイクルされます。

リサイクル前と後でほぼ同じ製品にできることを「水平リサイクル」と呼び、鉄もこれに該当します。そして、何度も繰り返しリサイクルが可能であると示す「クローズドループリサイクル」という言葉があり、その代表的な材料が鉄です。

日本の鉄スクラップは高品質で豊富に存在

使用済みの鉄であり、リサイクルの原料にもなるものを「鉄スクラップ」と呼びます。日本で発生する鉄スクラップは品質が高く、海外からの高い需要もあります。この背景には、日本の鉄鋼製品が世界的に見て高い品質にあるためです。

そんな高品質の材料が、日本国内には豊富に存在。この点は「都市鉱山」の項目として後述します。

以上は、日本の鉄リサイクルならではの利点です。


鉄のリサイクルの流れは?4つのプロセス

続いて、鉄のリサイクルのプロセスを見てみましょう。鉄をリサイクルする際は、おおむね次の4つのプロセスをたどります。

なお、前述のように鉄は繰り返しリサイクルが可能であるため、再生品が廃棄された後も、再びリサイクルのプロセスをたどることになります。

1.選別

鉄の特徴の一つが、磁性を帯びていることです。そのため、鉄と他の金属・材料とを選別する方法として、磁石が使われるケースが見られます。

磁石に付くものが鉄ですが、反対に付かない金属は非鉄金属と呼ばれます。鉄と非鉄金属は選別された後、それぞれがリサイクルのプロセスをたどります。

2.スクラップ

先ほど少し触れた鉄スクラップの「スクラップ」とは本来、廃棄物を意味します。選別された鉄は、原料であるスクラップとして使われるため、ギロチンシャー、あるいは、シュレッダーという方法で加工し、溶解しやすくします。

ギロチンシャーは、長さのある鉄をギロチンで均一サイズにする方法です。元々、棒鋼やH形鋼などだったものに用いられる場合があります。

一方、シュレッダーは鉄を数センチメートルの小さなサイズに破砕するものです。こちらは、元は車や機械などだったものを溶解しやすくするために用いられる方法です。

3.溶解

スクラップとなった鉄は、製鉄所で溶解します。

原料のほぼすべてが鉄スクラップである電炉メーカーでは、電炉で溶解。また、バージン材となる鉄をつくる高炉メーカーでもスクラップを利用しています。高炉メーカーの場合、高炉でつくられた銑鉄の不純物を除去するための転炉にスクラップを投入します。

鉄の場合、電炉でも高炉でも溶解と並行して精錬が行われます。

4.再製品化

こうして生まれ変わった鉄は、圧延などの下工程が施され、棒鋼、鋼板、コイルなどの形になります。ここから、さらに各製造業者が最終的な製品にするための加工が行われる場合もあります。こうして、リサイクルされた鉄が社会で使われる流れです。

前述のように、最製品化したものが廃棄された後も、またリサイクルの流れに乗ることになります。


エネルギー消費から見た鉄のリサイクル

リサイクルは資源の有効活用ができるだけでなく、消費エネルギーや二酸化炭素(CO2)排出量の削減にもつながります。それは、鉄のリサイクルも同じです。

計算方法などによっても異なりますが、電炉の方が高炉よりエネルギー消費量で3分の1、CO2排出量で4分の1、少なく生産が可能です。

もっとも、高炉メーカーも「ライフサイクル全体で見れば、必ずしも高炉材は環境性能が劣っているとはいえない」と主張しています。その賛否は分かれるとしても、高炉での生産でCO2削減を図っていければ、鉄はさらに環境性能が高い製品へと成長できそうです。

いずれにしても、鉄のリサイクルは持続可能な経済と社会の実現に資するものといえるでしょう。


鉄リサイクルのキーワード「都市鉱山」とは?

先ほど、日本の鉄スクラップは高品質であり、なおかつ、豊富に存在していることに触れました。こうした状況は、資源が豊富に眠っている点で都市を鉱山にたとえて「都市鉱山」と呼ばれます。資源に乏しいといわれる日本ですが、実は都市の中に多くの資源が眠っているということです。

都市鉱山について、もう少し深堀りしてみましょう。

鉄、あるいは、他の金属も、スクラップとなる前は建物や機械、鉄道のレールなどといった形で存在しています。そう考えると、インフラが整った日本には、非常に多くの「資源」が眠っているとご理解いただけるでしょう。

また、鉄だけでなく非鉄金属やレアメタルも相応の量が都市の中で存在しています。

こうした都市鉱山は、リサイクルだけでなく今後の経済、持続可能な社会を構築する原動力にもなるでしょう。


日本鉄リサイクル工業会から見る鉄のリサイクルの世界

鉄リサイクルの業界団体であるのが、一般社団法人日本鉄リサイクル工業会です。同会の正会員は、鉄スクラップ業者と商社によって構成。その他、鉄鋼メーカーも賛助会員として参加しています。

日本鉄リサイクル工業会ウェブサイトの「会員一覧」を見ると、鉄スクラップ業者は日本全国に存在することがわかります。こうした点からも、いかに鉄のリサイクルが国内のさまざまな場所で行われているのかが、分かるのではないでしょうか。


まとめ|持続可能な社会に不可欠な鉄のリサイクル

ここまで見てきたように、鉄はリサイクル可能な材料であり、そのプロセスも確立しています。さらに、鉄のリサイクルによって消費エネルギーやCO2排出量の削減もできるとわかりました。

環境保全が求められる一方、世界の人々が文化的、社会的な暮らしをするため、「持続可能な社会」の構築が求められているのも、ここまで触れてきた通りです。鉄は、機械や建物の材料となり、リサクルによってこうした持続可能な社会に貢献します。

鉄のリサイクルの最先端は展示会「リサイクルテック ジャパン」でご覧いただけます。展示会は製品・ソリューションやそれを仕事にする人と、直に触れ合える機会です。ぜひ、リサイクルテック ジャパンを活用していただければと思います。

【展示会情報】

リサイクル テック ジャパン -リサイクルの革新技術・エコシステム構築展-

<大阪展>会期:2025年5月14日(水)~16日(金)会場:インテックス大阪

<東京展>会期:2025年11月12日(水)~14日(金)会場:幕張メッセ      


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