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スマート工場のメリットを徹底解説!
将来性や課題、導入に向けてするべきこともご紹介
近年、デジタルトランスフォーメーションの進展に伴い、IoTやAIなどの先端技術やクラウドサービスを活用して工場をスマート化する取り組みが様々な産業で広がっています。
素材業界でも、工場のスマート化を検討しているケースが多いのではないでしょうか。しかし、「スマート工場というキーワードを見聞きしたことはあるけれど、どのように実現すれば良いのかわからない」とお悩みの方もいるでしょう。
本記事では、導入・実現を検討中の企業で働く方に対して、スマート工場がどのようなものなのかを徹底解説します。メリットや成功事例、課題、実現に向けて対応するべきこともご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
スマート工場(スマートファクトリー)とは
スマート工場(スマートファクトリー)とは、様々なデジタル技術(AIやIoTなど)の活用によって、生産ライン全体をリアルタイムで監視・制御可能な工場です。
生産設備や機器同士がデータを共有し、自動的に最適な生産計画を立てることが可能で、効率性・競争力の向上につながります。
工場のスマート化を進める目的
経済産業省の「スマートファクトリーロードマップ」に基づいて、工場のスマート化を進める目的を下表にまとめました。
①品質の向上 |
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②コストの削減 |
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③生産性の向上 |
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④製品化・量産化の期間短縮 |
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⑤⼈材不⾜・育成への対応 |
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⑥新たな付加価値の提供および提供価値の向上 |
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⑦リスク管理の強化 |
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より詳しい内容は、経済産業省の公式サイトでご確認ください。
経済産業省の公式サイトはこちら
スマート工場(スマートファクトリー)を導入・実現するメリット
以下は、スマート工場(スマートファクトリー)を実現するメリットです。
- IoTやAIによって生産プロセスが自動化される。
- 製造工程に関する情報が「見える化」される。
- 製造業のDX推進に役立つ。
それぞれに関して詳しく説明します。
メリット1.IoTやAIによって生産プロセスが自動化される
従来の工場で各種製造機器に関して最適なパラメータ設定を見出すためには、作業員がひとつずつ値を変更させながら、結果を踏まえて修正しなければなりません。試行錯誤が必要であり、手間がかかります。
しかし、IoTデバイスやAIなどを導入して工場をスマート化すれば、作業員が担当していた生産プロセスの自動化が可能です。AIが生産状況に応じた制御システムのパラメータ設定変更を自動的に実施してくれるため、少ない人員でも工場を稼働できます。生産性が向上する他、人手不足対策、属人化対策としても有効で、人的コスト低減につながるでしょう。
株式会社 HACARUSのAI外観検査ソリューション「HACARUS Check」 は、ロボットアームやカメラ、照明といった撮像装置と高性能AIを組み合わせた外観検査システムです。従来検査が難しかった鋳造品やプレス加工品といった立体物の検査が可能になりました。従来の検査機器よりも複雑な形状のワークに対応し、不具合の判定はAIが高精度で行います。
株式会社KNiTのAI画像解析サービス「GeXeL」は、研究者のルーティンワークを90%削減します。「重なりや凝集粒子の1次粒子径を見たいけど、粒度分布装置ではわからない。」「Image Jなど画像解析ソフトを使っているけど、人が時間をかけて解析している。」 そのような画像でも全自動解析が可能です。
上記の製品が出展した「高機能素材 Week」では、IoTデバイスやAIに関する情報が多数展示されます。ほかにも材料の製造加工機械、検査・測定・分析機器などが一堂に集結するため、各業界の研究・開発・設計・製造担当者の方におすすめの展示会です。
メリット2.製造工程に関する情報が「見える化」される
工場をスマート化すると、カメラやセンサーなどのIoTデバイスにより、製造工程に関する情報が「見える化」されます。生産性・品質のばらつきや低下を迅速に察知して原因を分析でき、製品の品質が向上するでしょう。
予期せぬトラブルが発生しても原因を究明しやすく、生産ラインを早期に正常化したり、影響範囲を最小化したりできます。また、機器のデータから不具合の兆候を検知して故障発生前の適切な時期に保全を実施すれば、故障の未然防止につながるでしょう。
なお、電気や熱エネルギーの使用状況も可視化されるため、対策すれば製造コストを削減できます。エネルギーの効率的な使用は、脱炭素化(カーボンニュートラル)を実現する上でも重要です。複数の工場を稼働している場合は、各工場から収集したビッグデータを解析し、得られた情報を各拠点にフィードバックして活用することで企業全体の効率化につながります。
富士電波工業 株式会社の「スマート監視システム」は、安定操業/品質ロスコスト低減に貢献します。炉の測定値や稼働状態、異常をWEB画面(炉別ホームページ)で閲覧、メールで通報できます。
ネットワークはLAN/WiFi/キャリアSIMに対応しており、パソコン/タブレット/スマホで確認することができます。
株式会社 マクニカの「サーマルソリューション」は、熱エネルギー可視化で現場の安全化・最適化・脱炭素化を実現します。環境や目的にあわせ、適切なサーマルイメージャーの選定からシステム構築・実装まで支援することで、製品の品質向上・生産効率の向上・エネルギー消費の削減を実現し、環境への影響を考慮した持続可能な製造プロセスの推進にも貢献します。
「高機能素材 Week」では、カメラやセンサーなどのIoTデバイスに関する情報が多数展示されます。ほかにも材料の製造加工機械、検査・測定・分析機器などが一堂に集結するため、各業界の研究・開発・設計・製造担当者の方におすすめの展示会です。
メリット3.製造業のDX推進に役立つ
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が叫ばれています。以下は、経済産業省によるDXの定義です。DXは、広い概念で、工場のスマート化だけに限定されません。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること |
スマート工場を実現し、部門間でデータを共有するためには、製造部門以外(事務部門など)もデジタル技術に対応せざるを得ないでしょう。そのため、工場のスマート化は、生産部門以外も含む製造業のDXに役立ちます。全社的なDXを促し、業務効率化や生産性向上を実現するためにも、まずは工場のスマート化を進めてください。
株式会社 日立ハイテクの「実験データ収集サービス」は、実験・研究開発に関するデータを一元管理するDXソリューションです。 研究開発を行う方にあわせた画面設計で、データ収集・データ整形の手間を省きます。
「高機能素材 Week」では、DX推進に役立つ情報が多数展示されます。ほかにも材料の製造加工機械、検査・測定・分析機器などが一堂に集結するため、各業界の研究・開発・設計・製造担当者の方におすすめの展示会です。
スマート工場(スマートファクトリー)の将来性
ドイツ政府が2011年に公表した「インダストリー4.0(第4次産業革命)」というビジョンに基づき、昨今、世界中でスマート工場が増加しています。
インダストリー4.0とは、人間や機械が互いに通信して情報を共有して製造プロセスを円滑化し、新たなビジネスモデルの構築(スマート工場を中心としたエコシステム構築)を実現する考え方です。フランスでは「Industrie du Futur」、中国では「製造2025」という名称で同様のビジョンが示されています。
日本政府も、「Society 5.0」や「Connected Industries」といったコンセプトを打ち出してスマート工場化を推進中です。Society 5.0とは、データを介して機械・技術・ヒトなどがつながることで、新たな付加価値創出と課題解決を目指す産業のあり方をさします。また、Connected Industriesとは、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ、経済発展と社会課題の解決を図る考え方です。
世界各国の政府や日本政府の方針により、今後、さらなるスマート工場の増加が期待されます。なお、スマート工場の増加は、脱炭素化(カーボンニュートラル)の観点からも重要です。エネルギーを効率的に使用でき、カーボンニュートラル達成に貢献可能なスマート工場には将来性があります。
スマート工場(スマートファクトリー)の成功事例
以下は、工場のスマート化に成功している企業の一例です。
- 富士電機株式会社
- 株式会社⽇⽴製作所
- 株式会社IHI
- 日本ガイシ株式会社
それぞれの成功事例を詳しく説明します。
事例1.富士電機株式会社
富士電機株式会社の大田原工場(受配電機器のライン生産を実施)では、IoTを活用した先進的なものづくりにチャレンジしています。
例えば、カバーのネジを締める工程では、供給する設備で詰まりが発生していることが監視カメラによって特定されました。なお、品質・生産進捗・稼働率・エネルギーのリアルタイムな見える化を推進したことにより、生産性が5%向上しています。
※出典:富士電機株式会社「スマートファクトリーとは何か?」
※出典:富士電機株式会社「操業・稼働・エネルギーの見える化」
事例2.株式会社⽇⽴製作所
株式会社⽇⽴製作所では、以下の要素を連携させ、ヒト・モノ・設備の情報を循環させる⾼効率⽣産モデルを確⽴しました。
- 作業改善⽀援システム
- ⼯場シミュレーター
- RFID⽣産監視システム
- モジュラー設計システム
なお、工場のスマート化によって、主⼒製品の⽣産リードタイムを50%短縮しています。
事例3.株式会社IHI
株式会社IHIでは、各種センサーの⼩型化と無線ネットワーク化により、どの場所に作業者がいても、機械がどこに置かれていても、細かく多様な情報を取得可能な体制を構築しました。⼈⼯知能が多数のセンサーの情報を解析して(例えば、マシニングセンターの稼働時間・電⼒量・振動などから)、より速く加⼯でき、工具の寿命を延ばす条件を求めることが可能です。
また、ウェアラブル機器から歩⾏距離や関節にかかる負荷を計測し、作業者ごとの負荷に偏りが⽣じないように、業務の割り当てを変えて均等化しています。
事例4.日本ガイシ株式会社
日本ガイシ株式会社では、⾃動⾞やスマートフォンなどで利⽤されるベリリウム銅(銅合金の一種)を生産しています。設備の改良や設定の見直しによってベリリウム銅の収率を改善したものの、アナログな手法では限界に達しました。そこで、状況を打破するために、工場のスマート化を実施します。
そして、溶解鋳造⼯程で約100の因⼦を対象に1,500ロット分のビッグデータを分析したところ、さらなる収率改善に成功しました。
スマート工場(スマートファクトリー)化を進める際の課題
以下は、スマート工場(スマートファクトリー)化を進める際の課題です。
- ある程度の初期費用およびランニングコストがかかる。
- サイバーセキュリティ上のリスクが増大する。
それぞれに関して詳しく説明します。
課題1.ある程度の初期費用およびランニングコストがかかる
工場のスマート化を実現するためには、IoTやAIなど、様々なIT技術・サービスを導入しなければなりません。そのため、ある程度の初期費用・ランニングコストがかかります。
ただし、設備投資に要した金額以上の効果を享受できる可能性がある(効率性・競争力の向上につながる)ので、コストパフォーマンスを検討した上で、予算を確保してスマート化を推進しましょう。負担を軽減したいのであれば、補助金の活用も選択肢としてご検討ください。
課題2.サイバーセキュリティ上のリスクが増大する
スマート化によって、従来は分離されていた工場内のネットワークを外部(インターネットや関連企業)に接続する場合があります。外部から不正アクセスされるリスクに晒されるため、サイバーセキュリティ対策を充分に講じなければなりません。
セキュリティ対策を講じる際には、経済産業省の「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン【別冊:スマート化を進める上でのポイント】」に目を通しましょう。また、独立行政法人情報処理推進機構の「スマート工場化でのシステムセキュリティ対策事例 調査報告書」も参考にしてください。
スマート工場の導入・実現に関して対応するべきこと
以下は、工場のスマート化実現のために対応するべきことです。
- スマート化に関する構想を策定する
- スモールスタートでシステムを導入する
- 従業員のモチベーションを向上させ、意識を改革する
それぞれに関して詳しく説明します。
ステップ1.スマート化に関する構想を策定する
経営者が強い意志を持ち、トップ主導で工場のスマート化を推進しましょう。まず、スマート化に関する構想(⽬的・⽬標、内容、対象範囲など)を策定してください。そして、責任・役割を明確化した上で、組織内で合意形成することが大切です。セキュリティ対策などに関しては、必要に応じて外部の専⾨家から助⾔を得ることもご検討ください。
なお、従業員が「監視されている」と感じないように工夫することも重要です。サプライチェーン上の企業にもメリットを提供し、データを管理する側と提供する側が共存共栄可能な関係を構築しましょう。
ステップ2.スモールスタートでシステムを導入する
スモールスタートで、リスクが小さく効果が大きい部分から、少しずつシステムの導入を進めます。部分最適の先にある将来的に実現したい全体最適を見据えながら、⾃社の課題解決に合致したシステムを選定してください。
初期段階では、機能を絞り込み、真に必要なものだけを導入します。そして、PDCAサイクルを回し、システム運⽤の改善を図りましょう
ステップ3.従業員のモチベーションを向上させ、意識を改革する
導⼊効果の定量的なモニタリングを継続的に実施し、⼩さな導⼊効果であっても、早い段階から共有してください。従業員のモチベーション向上につなげ、運⽤の定着を図りましょう。
IoTツールを積極的に活⽤するように呼びかけ、従業員の意識を改革することが大切です。ものづくりとIoTの両⽅を理解している⼈材の育成に努めましょう。
スマート工場関連技術を探すなら「高機能素材Week」がおすすめ
RX Japanが主催する「高機能素材 Week」は機能性フィルム・プラスチック・セルロース・炭素繊維複合材・金属・セラミックスなどの最先端の素材技術が一堂に出展する世界最大級の展示会です。材料だけではなく、材料の製造加工機械、検査・測定・分析機器など素材産業に関わるあらゆる技術が出展します。
下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。
開催地域 |
開催場所 |
日程 |
東京 |
幕張メッセ |
2025年11月12日(水)~14日(金) |
大阪 |
インテックス大阪 |
2025年5月14日(水)~16日(金) |
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IoTなどのデジタル技術を活用して、スマート工場の実現へ
IoTなどのデジタル技術を活用して、スマート工場(スマートファクトリー)を実現すれば、自社の競争力向上につながります。また、エネルギー資源を効率的に使用でき、CO2排出量の抑制が可能です。脱炭素社会(カーボンニュートラル)の達成に貢献する意味でも、工場のスマート化に向けて取り組みを開始しましょう。
脱炭素に取り組むために、スマート工場化に役立つ技術・製品・サービスをお探しの場合は、RX Japanが主催する「高機能素材 Week」にご来場の上、情報を収集してはいかがでしょうか。
「高機能素材 Week」詳細はこちら
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【監修者情報】
▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入と併せて分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他