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不織布(ふしょくふ)とは?特徴やメリット、デメリットを解説
使い捨てマスク(ディスポーザブルマスク)の素材として知られる不織布(ふしょくふ)。存在は知っていても、どのような素材なのか詳しくは知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、不織布の特徴やメリット、デメリットについて紹介します。日常生活で使われる場面や製品例も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
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不織布とは?
不織布とは、織らない布状のものをさします。一般的に布は、織るか編むかで製作されますが、不織布は癒着や接着、交絡などにより繊維を結合して製作されます。
日本産業規格では、以下のように不織布を定義しています。
不織布(nonwovens) 繊維シート、ウェブ又はバットで、繊維が一方向又はランダムに配向しており、交絡、及び /又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮じゅう(絨)フェルトを除く。 |
不織布は何からできている?歴史や作り方を紹介
現代の不織布は、繊維を一定方向あるいは無作為に集積し、接着樹脂や熱融着繊維で化学的に結合させたり、機械や圧力をかけた水流で絡ませたりすることで制作します。しかし、過去には現代と異なる方法で作成されていました。
不織布は糸を織る前から存在したともいわれています。諸説ありますが、ほぐした獣毛や樹皮を圧縮して布状にし、衣類として用いていたものが不織布の起源とされています。
なお、現在の不織布の主な原料は、綿や羊毛、麻、パルプ、レーヨン、ポリエステル、ガラス繊維などです。用途や製品にあわせて、適切な原料と製造方法が選択されます。
不織布は何ゴミ?捨て方を紹介
不織布の分別方法は自治体によって異なります。廃棄する場所ごとに、各自治体や廃棄物処理施設のルールに従うことが必要です。
一般的に、綿やパルプなどの天然素材が原料の不織布も、プラスチック原料の不織布も再生利用が難しいため燃えるゴミとして廃棄することが多いようです。ただし、不織布に金属製のパーツといった不燃性のものが組み合わされている場合は、不織布と付属部分を分離し、それぞれ分けて廃棄することも必要になることがあります。
不織布の特徴
不織布は織らない・編まない以外にも、様々な特徴があります。主な特徴を紹介します。
通気性・吸水性が高い
不織布はポーラス構造(多孔質)のため、通気性・吸水性が高い素材です。孔の大きさを調整すれば、様々な物質の濾過や遮断にも活用できます。
例えば、コーヒーフィルターとして不織布が使われることがあります。従来の紙製フィルターと比べて繊維の密度のバラつきが少なく目詰まりが起こりにくいというメリットと、安定した抽出により生まれる雑味や渋みの少なさという相反するメリットの両立が可能です。
保温性が高い
不織布は多孔質のため、素材のなかに多くの空気を含むことが可能です。そのため、保温性が高く、断熱材や防寒衣料などにも使われます。
例えば、冬の寒さや霜から露地栽培の作物を守るために、不織布のマルチング資材で覆うこともあります。保温効果により収穫を早められるだけでなく、軽量で作物に負担を与えにくい点も不織布を使うメリットです。
形状や強度を調整しやすい
素材や密度を調整することで、形状や強度を比較的自由に調整できるのも不織布のメリットです。目的にあわせて製造方法が選定され、様々な用途に活用されています。
例えば、抗菌効果が求められる場面での使用が期待される銀イオン溶出効果のある不織布や、振動減退性や熱可塑性などの特殊な性質を持つ不織布なども開発されています。
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不織布の製品・使われる場所
通気性や保温性が高く、また、加工の自由度が高いことから、不織布は幅広い用途に活用されています。主な製品や使われる場所について紹介します。
不織布マスク
マスクは用途によって、医療用マスク(サージカルマスク)と産業用マスク、家庭用マスクなどの様々な種類に分類されます。不織布はフィルター性能と通気性のバランスが良いことから、主に医療用マスクや家庭用マスクに活用されています。
なお、不織布マスクは、外側(外気に触れる側)と中間のフィルター、内側(顔に触れる側)の3層構造が一般的です。中間部の網目を調整することで、有害物質が鼻・口を通して人体内に入り込むのを防ぎます。
多くの不織布マスクでは、外側と内側はスパンボンドと呼ばれる透明度の高い不織布が使用されています。肌触りが良く、呼吸のしやすさを確保できる点もスパンボンドの特徴です。一方、中間部にはスパンボンドよりも極細の繊維径で作られるメルトブローンが用いられます。
また、不織布は加工がしやすく、デザイン性に富んでいるのも特徴です。とくに家庭用では、様々な色や質感のファッション性のある不織布マスクが出回っています。
布巾・掃除用シート
繊維がほこりを絡めとる性質を活かして、布巾として不織布が使用されるケースも増えてきました。また、不織布は速乾性があり適度な水分を吸収できるため、水拭きをしても水跡が残りにくく、フードコートや飲食店の布巾にも使われることがあります。
細かなほこりを絡めとる性質から、掃除用シートにも活用されています。使い捨てでき、衛生的である点や、一度絡め取ったほこりが容易には繊維から離れないため、ほこりを立てずに掃除ができる点も重宝される理由です。
紙おむつ
不織布ならではの吸水性の高さ、肌触りの良さを活かして、紙おむつにも使われています。使い捨てできるため、育児の負担を軽減できるだけでなく、汚物が手につきにくく衛生的である点も不織布を紙おむつに使用するメリットです。不織布は他素材と比べてコストが低い傾向にあることも、日用品であるおむつに適している理由のひとつです。
また、不織布は原料や製造方法を調整することで、一般的な紙状のもの以外にも、綿(わた)状や布状、レザー状のものなどに加工できます。人体に触れる表面部は肌触りの良い紙状もしくは布状、中間部には吸水性の高い綿状の不織布を使用することで、心地良さと実用性を兼ねることが可能です。
収納袋・洋服カバー・ラッピング素材
洋服を購入した際に使われる収納袋やクリーニングの袋、ショッピングバッグ(ショッパー)などにも、不織布が使用されることがあります。従来使用されてきた紙と比べると耐久性が高く、衣類などを運搬する間に破損しにくい点がメリットです。
贈答品を購入する際に、不織布の風呂敷でラッピングされることもあります。単価が安く使い捨てできるため、従来の布製の風呂敷とは異なりそのまま贈答先に渡すことも可能です。
不織布を利用するメリット
不織布はマスクやおむつといった衛生用品、布巾やモップなどの清掃用品、ラッピング素材など社会で幅広い用途に使われています。不織布が新たな用途・製品として利用されているケースもありますが、用途そのものは従来からあり、布や紙などの素材に取って代わって不織布が使用されているケースが少なくありません。
不織布が広く使用されるようになったのは、不織布ならではの特性が従来の素材より優れていたからに他なりません。不織布のメリットについて、詳しく見ていきましょう。
ローコストで製造できる
不織布は原料となる素材をそのまま圧縮、もしくは密着させることで製造します。布のように素材を糸状に加工する製糸の工程が不要なため、ローコストでの製造が可能です。
ローコストのため幅広く使われ、使い捨しやすい、衛生面での配慮が必要な場面で使用されやすくなります。例えば、家庭用マスクや医療用マスク、手術時・調理時に使用する毛髪ネットやコート(術衣、エプロンなど)なども、不織布ならコスト面の負担を軽減しつつ、使い捨て可能です。
また、布のように繰り返し使用する素材は、洗浄時に大量の水を使うだけでなく、汚水が発生し、環境破壊を招くデメリットがあります。不織布なら繰り返し使用する必要がないため、水資源を守ることにもつながります。
機能性にあわせて素材を選べる
布などの製糸工程が必要な素材は、糸化が可能な原料しか使用できません。しかし、製糸工程不要で製造できる不織布は、糸化できるかどうかにこだわらずに原料も選定できるため、付与したい機能性にあわせて様々な原料から製造できます。
例えば、吸水性が求められる生理用品やおむつなどにはレーヨン、保温性が必要とされる防寒衣料にはポリエステル、耐久性や耐熱性が求められる場合にはアラミド繊維などが原料として用いられることがあります。
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不織布のデメリット
不織布はメリットの多い素材ですが、デメリットもいくつかあります。一般的なデメリットについて紹介します。
なお、不織布は多様な原料を材料とできることから、機能性を付与しやすい点も特徴のひとつです。そのため、一般的なデメリットが該当しない素材もあります。
耐久性が低い
不織布は繊維化された原料を圧縮や接着により集積して製造しているため、布のように糸が構造的に絡み合っているわけではありません。そのため、耐久性が低く、繰り返しの使用には向かない傾向にあります。
しかし、原料や製造方法を工夫することで、耐久性を持つ不織布も開発されてきました。例えば、アラミド繊維を原料とする不織布は耐久性が高く、産業用のフィルターや絶縁材などにも活用されています。また、ガラス繊維を原料とする不織布は寸法安定性と耐熱性に優れ、長期的な使用にも耐えることが可能です。
ゴミが増える
不織布は価格の安さから、使い捨てが比較的しやすい素材として利用されてきました。布のように洗浄時に汚水が発生することもないため、衛生と水資源保護の観点からは優れた素材といえます。
しかし、不織布の普及によりゴミが増えている点には注意が必要です。例えば、不織布マスクはポリプロピレンやポリエステルなどの化学繊維を原料とするため、プラスチックごみとして分別されます。自然分解が難しく、適切に廃棄されない場合はマイクロプラスチックとして海洋汚染の原因になるかもしれません。
プラスチックごみは世界的に増加の一途をたどっています。1950年以降に83億トンを超えるプラスチックが製造されましたが、そのうち、63億トンがゴミとして廃棄されました。回収されたプラスチックごみの約8割が土中に埋め立てられたり、海洋などに投棄されたりしています。大切な地球を守るためにも、不織布を含むプラスチックごみの削減は緊急課題といえるでしょう。
優れた素材が見つかる「サステナブルマテリアル展」へ
「サステナブルマテリアル展」では、不織布ならではの利便性と再利用可能な耐久性を両立させた新素材に加え、サステナブル材料(環境配慮型材料)やリサイクル材料、サーキュラーエコノミーとしての資源・材料・技術が多数集結します。脱炭素化に向けて取り組んでいて、関連技術をお探しの方は、ご来場の上、情報を収集してはいかがでしょうか。
下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。
開催地域 |
開催場所 |
日程 |
大阪 |
インテックス大阪 |
2025年5月14日(水)~16日(金) |
東京 |
幕張メッセ |
2025年11月12日(水)~14日(金) |
【出展検討の方】
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再利用可能な素材を利用して環境への負荷を軽減しよう
家庭用マスクや紙おむつ、掃除用シートなど、日常生活の様々な場面で活用される不織布は、ローコストで製造でき、なおかつ機能性に優れた素材です。
一方で、耐久性が低く、再利用が難しい点はデメリットといえます。一定以上の耐久性を有する不織布もありますが、衛生面や分別などの問題から再利用が進まないケースもあり、プラスチックごみの増加の一因となっている点には注意が必要です。
また、不織布はポリプロピレンやポリエステルなどのプラスチックが原料のことが多いため、プラスチックごみ増加の一端を担っています。
環境を守ることは、企業が果たすべき社会的責任の一つです。素材を選ぶときは、利便性だけでなく再利用可能かどうかに注目していく必要があるでしょう。美しい地球を次世代に引き継ぐためにも、再利用可能なサステナブルマテリアルに注目してみてはいかがでしょうか。
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【監修者情報】
▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進。併せて生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。
「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他